2017年04月27日  作品別感想 

映画 鷲尾須美は勇者である 第2章 感想

 三ノ輪銀生きてくれ、と思って映画を見た人はいるだろうけど、生き残るに違いないと思っていた人は多分いない。原作小説を読んだ人はもちろんわかっているし、『結城友奈』に3人中2人しか登場しないことから何となく察した人もいるだろうし、第2章の予告やポスターは「死にますよー」と言っているようなものだから。Wikipediaにも載っていることだし。

 公式にここまではっきり死亡宣言されると焦点は死ぬかどうかではなくどのように死ぬかである。この作品においてそれは、どのタイミングで樹海化するかということを意味する。そういう点に注目しようと決め気を引き締めて臨んだのだが……いやー序中盤はゆるい展開でしたね。
 これ本当に人が死ぬ作品か?と思うくらい、時間が経つほどに緊張感がなくなっていった。今思えば、こういう風にギャグでシリアスを粉砕するのは岸監督の得意技だったか。失敗することも多い演出だけど、今回は先の展開への警戒心を解く効果があって良かったと思う。

 さて、注目の樹海化タイミングはいつか。楽しい時間を遮ってこそ樹海化は映える。クラスメイトとのおしゃべり、食事、家族と戯れる時間、腹を割った思い出話。容赦なくぶった切るには最適のイベントがどんどん無事に過ぎていく。それは、イベントを全てを無事終わらせ、毎日が続いて行くと信じ切ったその瞬間だった。なるほどなぁ~~~~~。ぶった切るんじゃなくて、全部終わってからなんだなあ。

 停止する鳥の寂しさ。『結城友奈』に比べてこの作品には樹海化警報が無いのが残念だとずっと思っていたけれど、この場面については無音で良かった。それと赤い夕焼けの魔力。
 「終わり」みたいなものが見えた気がした。

 私が描いた最悪のシチュエーションと全然違うものが飛んできた。さらに、滅びが好きな私が、死ぬのを見に来たはずの人間のことを死んでほしくないと思ってしまった。この映画には全局面で圧倒されてしまったなあという思いだ。

 語るべきポイントはもっと沢山あるのかもしれないけれど、最大の焦点だと思っていたことについて話せたのでこの記事は満足。でもあと1点だけ。

 バーテックスを倒した後、光が消えたように白黒になった寂しい樹海。巨大な敵と戦っているときは大きく見えた少女が、今は広大な空間で小さく小さく存在している。それがとても美しく思えた。

 やっぱり勇者シリーズは美しいんだ。

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2017年04月17日  雑記 

りゅうおうのおしごと! 1~5巻 将棋ネタまとめ&感想

 小説『りゅうおうのおしごと!』の1~5巻を読んだ。面白かった。
 「熱い」対局シーンや幼女の可愛さが魅力の作品だが、忘れてはいけないのが文のあちこちに入った将棋ネタ。熱心な将棋ファンである作者が繰り出すネタは質、量ともに優秀で、読んでいる間にニヤリとすること多数、大笑いしてページをめくる手がとまることも何度かあった。
 今回はその将棋ネタをまとめ、感想を書いてみたい。すべてのネタを網羅したかったのだが、あまりのネタの豊富さに途中で心が折れてしまったため、特に印象に残ったものや面白かったものを中心に紹介する。やや既読者向け。

 すでに同じような記事がネット上に複数存在しているだろうが、そんなことを気にしたら負けなのだ。将棋の大事な考え方「投了はだいたい悪手」を信じて投稿してみよう。


清滝師匠について
 『りゅうおうのおしごと!』はプロ棋士である主人公の師匠が会館から放尿するという恐るべき場面から始まる。そして恐ろしいことにこの場面には元ネタが存在する。米長邦雄のエピソードだ。清滝と同じように将棋で負けた悔しさから放尿を試みたが、完遂した清滝に対しこちらは周りの必死の静止により未遂に終わった。このあたりが現実とフィクションの違いだろうか。
 放尿という衝撃的なイベントで一般読者に興味を持たせ、このネタを出してくるのか!?と将棋ファンを驚かせる、幅広い読者層にインパクトを与えるツカミといえよう。

 ズボンを脱いだ師匠の様子は次のように表現されている。
「そして今、師匠は若々しさと共に下半身をも解き放ち」 (第1巻P12)
 股間はともかく若々しさとはなんだろう?と思わないだろうか。これも将棋ネタであり、谷川浩司が新聞の取材を受けたときの見出しが元になっている。神戸育ちらしい、いかしたファッションである。

 米長と谷川は将棋連盟会長経験者。冒頭を飾るネタで大物をイジり、怖いもの知らずなところを見せつけた。

 師匠のモデルについて初見時私は、50才くらいの関西棋士で良く喋りA級や最高位挑戦の経験がある棋士ということで阿部隆を想像した。しかし後に読んだ場面(5巻P313)の月光会長との会話は井上慶太のイメージだろう。
 4巻のあとがきにもあるように、キャラクターのモデルに正解は無い。この作品には清滝のように何人かの棋士のイメージやエピソードを組み合わせたようなキャラクターが何人も登場する。



主人公の八一について
 私は八一の描写の中に3人の棋士のイメージを見た。
 まず、4人目の中学生棋士、渡辺明。5巻の名人戦の多くも渡辺の将棋が元になっている。
 1手損角換わりを中心とした変態的な戦法選択は糸谷哲郎から。糸谷は竜王を獲得した関西期待の若手だし、ハワイ対局で「アローハ」と言ったのも糸谷。前夜祭の場でやたら難解な挨拶をしていて面白いので、よかったら読んでほしい。→参考リンク
 そして、タイトルを獲得してから不調に陥ったことのある森内俊之。 対局に負けた直後東京から神奈川まで走る場面の元になったのも森内のエピソード。ちなみに、森内は神奈川の自宅まで走って帰ったのであって、神奈川の駅から電車に乗った八一とは少し状況が異なる。森内の弟子には女流棋士の竹俣紅がいるが、若い女流棋士の師匠である点も意識されているというのは考えすぎだろうか。
 3人全員が竜王経験者である。主人公なので注意深く探せばもっと沢山の棋士のイメージを見つけられるかもしれない。



夜叉神天衣の棋風
 2番目の弟子天衣に2人の棋士のイメージを見た。面白い組み合わせなので紹介したい。

 受けに力を発揮する天衣が、次のように表現されている場面がある。
「鉄板のような精神力だ」 (2巻P67)
 これは"鉄板流"森内俊之を示している。本人は好きじゃないらしい二つ名だけど、やっぱり私はこれがしっくりくるね。
 上に書いた通り師匠は森内成分を含む。八一の棋譜を通じて将棋を覚えた天衣は、森内成分まで受け継いだのかな?などと考えると楽しい。

 天衣の特徴は受けの強さだけではない。一手損角換わりや角交換振り飛車が得意で、序盤感覚に優れ、独創的な指し回しを見せる。これは佐藤康光のイメージだろう。これだけだと根拠に乏しいようだが、森内と同じように文中にヒントが書いてある。
『天衣無縫』 (2巻P220)
 佐藤には「変態流」「緻密流」「一億と三手読む男」などの二つ名があるが、私はこの天衣無縫というのが好き。

 空中戦が得意なオールラウンダーで、高い終盤力を持ち、道場で極端な低級から始めたあいには羽生善治のイメージを見ることができる。一方ライバルキャラの天衣は、羽生と長年戦ってきた森内佐藤のイメージを兼ね備えてあいに対抗している。そういう構図なのかもしれない。



「りゅ、りゅ、」
「りゅ、りゅ、りゅ、りゅうお」 (2巻P129)
 照れ屋な生石飛鳥は竜王に声をかけるのも一苦労で、何度もつっかえてしまう。とてもかわいらしいこの場面にも、多分元ネタがある。大盤解説をする村田顕弘だ。


(0:50~)

 予想外の指し手を伝えられた村田はひどく動揺して「りゅ、りゅ、竜を!?」と言った。この場面からキャラクターが誕生するとは全く思わなかった。
 村田の場合は「りゅ、りゅ、」のあとに来る言葉が「竜を」なのに対し、飛鳥の場合は「竜王」に変わっているのが面白い。



盤の星
 2巻のあとがきのどの部分が将棋ネタかわかるだろうか。
 答えは全部である。
 元ネタはこちらを読んでもらいたい。短くはないけれど、非常に面白いのでぜひ。
 ほぼ引用みたいなものなので、初めて読んだとき大笑いした。特に最後の決め台詞は非常に面白く、必見だ。

 配役は次のようになる。
   八一 → 先崎
   万智 → 郷田
   燎  → 中村
   銀子 → 羽生
 八一が担当する先崎の師匠は、清滝放尿事件のモデルとなった米長。これは流石に偶然だろうが、こういう読み方ができると楽しくて良いですよ。


次回へ続く。
2017年04月11日  作品別感想 

映画 鷲尾須美は勇者である 第1章 感想




 映画を見る前の『鷲尾須美』の事前知識は、『結城友奈』公式HPで連載されていた手記を読んだことと、Wikipediaの作品ページを読んだことくらい。どんなキャラが出るのかくらいは知っているけど、細かい話の流れまではわからないという感じだった。
 だから数少ない知っている点である手記がしっかりアニメ化されていたのは嬉しかった。あそこ声がつくとああなるんですね。あの不穏な感じがとても好き。作品の雰囲気を作り価値を高めていると思う。

 一番上に書いたように、勇者シリーズのことを特別好きでもないし、特別面白いとも思っていない。ただ、美しい作品だなと思ったことはある。
 絵柄が美しい。音楽が美しい。キャラの顔や立ち姿が美しい。樹海が美しい。そして、友情が美しい。
 数年ぶりに見る勇者部ということで、樹海やバーテックス、コーラス付きのBGMなど、何かが出てくるたびに懐かしさを感じていた。特に懐かしかったのは起立礼のあと着席せずに向きを変える生徒達(児童達)ですね。私はあれこそ勇者シリーズの代名詞だと勝手に思っている。
 樹海化警報が聞けなかったのは残念だった。

 と・・・鷲尾須美ちゃんは友達作り苦手真面目ちゃんかわいい。合宿を経て仲間との距離が近付いていくのは見ていて幸せになれたし、ラストの場面で余裕がなくなったような様子で仲間の名前を呼んだところは「かわいい生き物」であった。
 共感しやすかったのは私自身も人付き合いが苦手だからだろうか。私も早く心を開いて「かわいい生き物」になろうと思います。

 メインキャラが小学生でやや声が幼いことと、戦闘シーンが続きずっと大声を出していたので、ちょっと耳がキンキンしてしまった。これは作品というよりも映画館に原因があるのかな。
 耳がキンキンしたといっても声優に問題はないし、むしろ頑張ってくれていたと思う。ぽわぽわ&方言キャラの得意系なんだけどいつもより低年齢感を加えてちょっと新鮮な花澤香菜。歌も演技もだんだん茅原実里みたいに思えてきた三森すずこ。
 そして花守ゆみり。忘れかけていたけれど元々花守ゆみりを見にこの映画を見に来たのだった。多少先の展開を知ってる身として、"こういうキャラ" 界の黄金ルーキー花守が"こういうキャラ"を演じるのを目と耳に焼き付けたくて。("こういうキャラ" がどういうキャラなのかはご想像にお任せします)

 趣味が悪いことはよくわかっている。もしかしたら私の中の趣味が悪い部分が勇者シリーズに興味を持っている理由なのかもしれない。
 上で勇者シリーズは美しいと書いたけれど、明るい感じの美しさだけでなく、暗い感じの美しさもある。美しいものが壊されていくことや、絶望的状況で壊されまいとあがく姿に美しさを感じることもまた事実。
 そういう意味で、もしかしたら『鷲尾須美』は(第2章くらいまでの)先の展開を知り、絶望の前の美しい日常を愛でるのも1つの楽しみ方なのかもしれない。情報を伏せずに、次回予告や第2章のポスターでどんどん情報公開していっているのは、そういう楽しみ方ができるようにするためだったりするのかな。

 先の展開を多少知っているとはいえ、第3章がどのような内容になるのか全然知らない。勇者シリーズには欠かせない"アレ"もまだ出てきてないし、勝負所はまだまだこれからでしょう。
 劇場版の公開日程が、第1章と第2章の間は狭く第3章までの間が大きめに空いているのは、第2章までがどんな物語なのか隠すつもりはないしどんどん出していくけど、第3章の情報はシークレットにするから楽しんでね、という意味ってのは考えすぎかしら。考えすぎなんでしょうね。






■余談
昔Wikipediaでは物語の核心に触れる内容の前後に注意書きをしてくれていたのだけれど、議論の末そういう配慮はやめて堂々とネタバレを書く方針になったらしい。アニメの情報を調べに行ったらネタバレを食らうこともしばしば。ちょっと困るけど仕方ないか。
↓参考リンク
Wikipedia:ネタバレ

これを読んでいる皆さんも気を付けてくださいね。
あ、今回見た映画のページへのリンクをここに置いておきますね。(責任は持ちません)
鷲尾須美は勇者である - Wikipedia
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